カナダの大学で薬学の授業と実務実習

カナダの薬剤師試験について

Evaluation examを無事に通過した外国人薬剤師が、カナダバンクーバーで薬剤師になるには、通称CP3という、UBC(ブリティッシュコロンビア大学)が提供している外国人向けの薬学講座の受講と実務実習、いわゆるブリッジングプログラムが必須になります。ここでは、パンデミック以降この講座と実務実習がどのように行われたかを、簡単に振り返って行きたいと思います。

今後カナダで薬剤師を目指す方のお役に立てれば幸いです。

UBCでの授業

私が薬剤師を目指した州はブリティッシュコロンビア州でしたので、薬剤師試験に加えてここでは、外国人薬剤師はCP3という、UBCが行なっているPharmacy Practice Programというコースを受講しなければなりませんでした。

これは12週間の座学と、12.5週間の実務実習がセットになったコースで、座学はパンデミック以降、オンラインでの受講になります。(2024年現在)

先に12週間の座学を通して薬学の全体的な復習と、実務実習に向けて基本的な薬局の技術や知識を学びます。

後半で送り出される実習は、UBCがなるべく受講者の希望するロケーションの近くに薬局を割り当ててくれます。実習中は祝日も関係なく、無給で40時間のフルタイム勤務をすることになります。

ちなみにこの必須プログラムや実習時間に関しては、州によって違いがあります。中にはブリッジングプログラム不要な州や、実習に給料の発生する州もあったようですが、急にブリッジングプログラムが必須になってしまったりなど都度変更があるようなので、働きたい州のcollege websiteをよく確認するのが良いと思います。

前半:12週間の座学について

コース受講希望が受理された後は、UBCから丁寧なカリキュラムが送られてきます。

一コマ1時間で午前は二コマ授業、午後は二コマ〜三コマの座学だったり、週の後半は患者さんとの関わり方の練習を行う実務の時間に当てられます。

授業は週に4回で火曜日から金曜日までです。

もちろん6年分の授業を全て12週間でカバーすることはできませんから、座学に関しては、事前に授業の資料と予習用のビデオが投稿されますので、事前に視聴し必要であれば事前に課題も済ませます。

薬理学や薬物動態などを細かく復習する授業よりは、カナダで知っておくべき疾患のガイドラインの概要と第一選択薬、薬物相互作用、薬局で使用すべき参考文献の見方、最新の薬局事情について例えばマリファナの合法化や新しい血糖値測定機などについて幅広く学びます。

授業によっては4〜5人のグループになって調べ物と発表用の資料を作成することもあります。

週の後半は、患者さん役の一般の方をお招きして薬剤師と患者さんのロールプレイ、または薬剤師と医師のロールプレイ、そしてその結果に基づくケアプランの作成を行います。

このケアプランというのは患者さんに対する治療計画のようなもので、日本では書き慣れていない私はこの課題に大変苦労しました。

具体的には、患者さんの基本情報、治療のゴール、オススメの治療方法となぜ他の方法を選択しなかったか、いわゆるRationalについて、今後のフォローアップ計画について、参考文献と共に1-2ページのものを作成します。

この患者さんというのは、なんと授業で薬局で投薬をするロールプレイを行うのですが、その際に来局した設定の患者さんについて作成します。

つまりロールプレイでうまく情報を集められなければ、アレルギーや家族歴などはあらゆる可能性を網羅してケアプランを立てるか、同じ患者さんの設定になった他の友達に助けてもらうかになります。

ロールプレイでは、質問すべき項目を聞けていたか、患者さんから見た薬剤師役の印象はどうだったかなどを細かくフィードバックしてもらえます。そしてこのロールプレイは今後のOSCEの練習にも大変役に立ちます。

この他にも、薬局で使われるコンピューターの入力練習の時間もあります。

ちなみにコースはオンラインでの受講が可能だったため、私は全て日本で授業を受けました。当然時差のため、これら授業は深夜2時頃から始まり、サマータイムが終わって時差がさらに広がって、後半は授業が全て終わる頃には朝5時、という昼夜逆転の毎日を送っていました。

後半:実務実習

さて2020年、私は実務実習開始直前にカナダへ渡航し、パンデミック真っ只中だったため隔離も済ませてすぐに実習が始まりました。

自分の希望した地区に近い薬局に割り当てられるわけですが、私はバンクーバーのダウンタウンを希望したため、大変忙しい店舗に割り当てられてしまいました。

そして当然実習で来る学生は外国人薬剤師だけではなく、現地のUBCの薬学部の生徒も来ます。

ネイティブの現役大学生は、ほぼ薬剤師顔負けで処方箋の受け取りから調剤、投薬、疑義照会まで一人でやってのけますが、実習で初めて本格的にバンクーバーに住み始めた私は、英語からカナダの医療システム、果ては近所の他の薬局や健康食品専門店の事情など何も知らずに実習を始めたため、とても苦労しました。

実習に行けばなんとかなる、薬剤師が教えてくれる、そう自分に思い込ませて始まった実習でしたが、自分にできることは何があり、何がわからないかをはっきり薬剤師に伝えなければ、当然こちらの薬剤師は丁寧に指導などしてくれませんでした。

最初のうちは、来局した患者さんの本人確認をする、取りにきた薬が正しいか確認、簡単なお薬の説明をする、リフィルのリクエストを受けたらリフィル処方箋を発行する、など基本的な仕事を中心に行い、徐々に電話を受け付けたり、処方箋をコンピューターに入力したりと仕事の幅を増やして行った感じでした。

しかし英語の壁は想像以上に高く、日本で英会話に通っていようと、患者さんが何を要求しているのかわからない、電話で生年月日を聞き取れない、など初歩的なことでつまずいてしまうことも何度もありました。その上この時期はパンデミック真っ只中であり、投薬窓口に分厚いプラスチックの飛沫避けの壁が設置されており、物理的にも非常に音が聞こえにくい環境にありました。

もちろんただ実習に行けば良いのではなく、先のケアプランや、疾患に関する調べ物と発表など、実習のうちにこなさなければいけない課題もあります。

最終的に私は、担当薬剤師の方に、ギリギリで合格にはしてあげるけれど、このままでは今後の試験で合格する見込みは低い、と言われてしまいました。

その通りMCQとOSCEでは本当に苦労しましたが、もしCP3での多少の臨床に関する授業がなければさらに何もできなかったことと思います。

カナダの薬局事情や、こんな英語力の私がどうやって実習を乗り越えたかに関してはまた別で記事にしたいと思いますので、こちらで実務実習をお考えの方はぜひ参考にしていただければと思います。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

昼夜逆転の課題ざんまいのCP3の後は、毎日泣きながら乗り越えた実務実習が待っていて、さらにそこからはずっと試験勉強の毎日が始まります。

カナダで薬剤師になりたい、そう思う精神的な支えがとても大切な時期です。

これからこのプロセスを始める方は、恋人がいたり、経済的な目標があったり、とにかく強いモチベーションになるものを一つでも見つけて乗り越えられればと思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

次回はMCQ、OSCEについてお話したいと思います。

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