日本の薬学生も、実習に出る前にOSCEには必ず合格しなければなりませんが、カナダのOSCEと日本の試験はかなり違いがあります。
例えば、日本のOSCEの場合は、処方監査や水剤、散剤の調剤なども試験されますがカナダではそのような実務に関する試験はありません。
ここではもう少し詳しく、カナダのOSCEに関するお話をできる限りでして行きたいと思います。
カナダのOSCEの概要
まず、以前お話ししたMCQと同様にカナダ出身の薬学生も皆平等にOSCEに合格しなければ薬剤師にはなれません。
受験日は5月と11月の年間2回チャンスがあります。
試験されるのは、10 interactive stations, 2 non-interactive stationsで、そのほかに1ステーションは今後の試験の参考として採点されないステーションがランダムであります。
interactive stationとは、対話相手がいるステーションのことで、医師役、看護師役、患者役で設定は病院や薬局などランダムに薬に関する相談を持ちかけられるステーションです。
non-interactiveとは、日本のOSCEで言えば処方監査のステーションですが、与えられた参考書を見ながら投与量を計算したりなど、こちらもランダムに参考書を読み解く能力を問われるステーションです。
各ステーションの間には休憩のステーションが挟まれているので、試験、休憩、試験、休憩、を繰り返すような形で約4時間ほどで一日の日程が終了します。
当日は朝早く6時、7時くらいから始まる午前組と、12時頃から始まる午後組のどちらかに割り当てられるかと思いますが、試験会場や集合時間などは申し込みしてから試験が近づくギリギリまで教えてもらえません。
また、どのステーションも7分以内に終わらせること、という時間制限があります。
合否に関してはこちらもやはり明確な点数などがなく、全体的な出来に合わせて自分も同程度のパフォーマンスができていれば合格、といった具合です。
不合格になれば自分のパフォーマンスにつけられた点数の平均と、そのほかの受験者の平均を比較するフィードバックが送られてきます。自分はどの部分が弱かったのか、大まかに把握することはできますが、フィードバックが送られてくるまでには何ヶ月もかかりますし、次のOSCEでも同じような項目に焦点を当てた試験問題が出るとは限りません。
つまり、不合格になったらフィードバックなど待たずに次に向けてまた基礎から練習し直す方が良いということです。
合否発表に関しても受験から2ヶ月程度待たされるので、その期間にゆっくり休むか、手応えがいまいちだったと感じたらすぐに次の練習を始めるか、結果を待たずに決断した方が良いかと思います。
では、interactive, non-interactiveのステーションについてもう少し詳しく話して行きたいと思います。
Interactive station
OSCEの規約上、実際の試験問題を他者に教えてはならないというルールがあります。
ですので実際に経験してきた問題をここで説明することはできませんのでご了承ください。
Interactive stationでは、医師、看護師、患者、患者が子供の場合はその親など、とにかくランダムに薬剤師に質問がある、というような設定でステーションが始まります。
ステーションは、個室に入って試験官の前で相手役の人との1対1の会話を見せる形で行われます。この個室のドアには、ステーションの設定が書かれているので、ステーションが始まる前に与えられる数分の間に、どのような設定なのかを理解することがとても大切です。
この設定はいわゆるドアノートと呼ばれていますが、例えば、あなたは病院薬剤師で、医師があなたに質問があるので個室内で待っている。や、あなたは薬局薬剤師で、お客さんが市販薬を買いにやってきたので実務で行っているように対応しなさい、など本当にざっくりとしたステーションの設定が書かれております。
個室には薬局のカウンターに見立てた机があり、関連する参考書の抜粋、実際の薬の瓶やデバイス、患者さんのプロフィールなどが置かれているので、必要に応じてこれらを利用して質問に答えます。
ポイントは、準備されているもの全てに注意を払う、ということです。
0SCEのステーションは、意味のないものを準備したりしません。なぜそれらの参考書が置かれているのか、なぜ患者さんがデバイスを持ってきたのか、なぜ薬の瓶が準備されているのか、はほぼ全て答えに関連していると考えてよいと私は思っています。
7分という限られた時間で、約2分間相手から情報収拾をしたり患者さんのアレルギーなどを聞いて、約2分以内に必要な答えを参考書から見つけ、残り時間で説明や、フォローアップの申し出を行うのが、全体的なInteractive stationでの時間の使い方になります。
答えを間違ってしまっても、試験の前提として「実務でいつも行っているように」とあるように、時間内に訂正すれば大きな問題にはなりませんが、7分の制限が、英語が第一言語ではない受験者にとっては大きな壁となってきます。
Non-interactive station
Non-interactiveのステーションは、処方箋の監査や調剤済みの薬の監査、計算問題など様々で、同じように7分間が与えられます。
電卓は準備されていません。
調剤済みの薬に関しては、カナダは散剤や水剤がメジャーではないため、ほぼ錠剤やデバイスの監査になるかと思います。万が一水剤があったとしても、子供用の抗生剤や大人の口腔内消毒用の薬など、種類は多くはないと考えられます。
対話相手のいないステーションで、個室に入って机に向かって出された問題を解く時間になりますが、参考書がたくさんあったり、疑心暗鬼に陥ってしまうなど、何も対策してこなければ案外苦戦します。
こちらもポイントはやはり、ステーションに準備された薬の瓶や参考書などをとにかく速く全体的に目を通すことが大切です。
答えはシートに手書きしなければならないので、何が間違っているのか説明ができる程度のライティング能力は必要です。綺麗に書くことに気を使う時間すらないので、自分の中で定型文を作っておくと良いかもしれません。
例えば、Total amount is wrong. Not 20 tablets but 24 tablets were dispensed.など的確に試験官にアピールできる一文を準備しておくと、答えを書くのに余計な時間を消費しなくて済みます。
各ステーションの勉強方法
対話相手がいるステーションに関しては、とにかく練習、これしかないと思います。
以前ご紹介したPharmachieveでもOSCE受験者用のコースが準備されていますが、結局は自分が練習してなんぼです。
OSCEの練習用問題は本もいくつか出ていますし、探せばたくさんあるかと思います。
それらを徹底的に練習します。
練習相手はCP3などの薬剤師のコースで友達を作って練習相手を頼むとか、オンラインで同志を募るなど、方法はいくつかありますが、友達に頼めるのならやはりそれが一番信頼できて良いかと思います。
これらの練習問題は一度、できた!と思っても日を改めて同じ練習問題をやってみるとうまくいかないこともあるので、とにかく自分の中でパターンができるまで、何度でも練習します。
参考に、私の場合は休みの日は薬剤師役で3-4件、練習相手のために患者役になって3-4件、仕事のあとは2-3件同様に薬剤師役と患者役を交代しながら、毎日練習しました。
一つの練習時間が無条件に7分+フィードバックの時間になるので、一日2時間〜4時間くらいを費やした計算になります。
OSCEは市販薬に関しても質問がくるので、以前紹介したCTMAという本にも全て目を通しておくことをおすすめします。
普段の練習問題の参考文献は、こちらも以前紹介したCTCという本を準備して練習しました。
これら2冊は、OSCEでも推奨している文献なので、カナダ版の治療薬マニュアルであるCPSと合わせて形式になれておくことが大切です。
ちなみに必要な薬を、本の中から素早く検索しページを開くような練習は必要ありません。当日OSCEでは必要な部分の項目のみコピーして準備してくれます。例えば痛風に関するステーションの練習であれば、最初からCTCの痛風の項目を開いてステーション練習を始めれば良いわけです。
しかしなぜがOSCEはこれ以外の、どこからともなく準備してきた見たことも聞いたこともない文献を参考文献として準備してくることが多々あるので、多様な文献に触れておくことをおすすめします。
non-interactiveに関してもOSCEの参考書を一つ購入して、答え方のパターンなどを覚えるために活用しました。
正直どんな問題が出るのか予想がつかないため、確実な対策方法がありませんが、これらが受験準備のために私が行ってきたことですので、参考になればと思います。
まとめ
いかがでしょうか。
正直OSCEは、これまでのどの試験よりも毎日毎日練習を繰り返して、ようやく合格できた、私にとって最難関の試験でした。
もしネイティブスピーカーが知り合いにいれば、絶対にネイティブからのフィードバックをもらうことをおすすめします。
そうでなくても、すでに薬剤師として働いている友達に練習相手をお願いしたり、インターンシップで繋がりができた薬局に引き続きお世話になって、実際に薬剤師がどのように患者対応しているのかに触れるのも、試験での糧になります。
ちなみに5月は一般的にカナダ出身の大学生たちが受験する傾向にあるので、人数はすごく多いです。一方で11月は5月に受験しなかった一部の大学生と、ほぼインターナショナルの受験生だな、という印象で、私が受験した時は受験者も半分以下でした。
受験者が少なければ合格枠も少ないかもしれませんが、ネイティブである学生が同時受験するライバルではないメリットもありますので、受験時期に関してもよく考えて申し込みましょう。
引き続き試験に関するお話や、カナダの情報を発信して行きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
コメント
カナダの薬剤師が受験するオスキーってどんな感じ? | カナダの薬屋のひとりごと
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gpjvnqirs http://www.g6h26lla6g3cr2yw6nn6j024j8zp5663s.org/
カナダの薬剤師もカナダ国外の薬剤師も同じオスキーを受験しますが、患者対応、医師対応にもっと焦点を当てており、コミュニケーションスキルと状況判断力をテストされている感じです。日本のオスキーでは調剤業務の正確性と患者医師対応が半々としたら、カナダは2対8くらいでしょうか。