日本の薬剤師が、カナダで薬剤師になるまでのプロセスを振り返る
初めまして、道産子薬剤師しまと申します。
ブログのタイトル通り、この度無事にカナダで薬剤師登録を受けたことを機に、ここに到るまでのたくさんのプロセスをゆっくり振り返っていきたいなと思いブログをはじめました。
この記事を見てくださっている方はおそらくすでに日本で薬剤師さんをなさっているか、薬学生さんであると思います。
この記事を見て、私にもできそう!とか、いやお金と時間かかりすぎだろ、やめておこう、とか何かしらの選択肢のきっかけになれたら幸いです。
とにかくプロセスはものすごく時間とお金がかかります。
ここではまずその概要を、最新のカナダの試験事情なども含めてざっくりと紹介していきたいと思います。
カナダでの薬剤師登録までに必要なこと
カナダで薬剤師になるには、大まかに以下のプロセスを全てクリアすることが必要となります。
なおこれから紹介する内容は、私がプロセスを行ったブリティッシュコロンビア州でのお話になります。ケベック州はこの他にフランス語が必要など、州によって必要とされるプロセスや順序が変わってくるため、詳しくは各州のCollege(州の薬剤師管理団体)の情報をご確認ください。
- NAPRAへの登録
- PEBC Document evaluationの合格
- PEBC Evaluating examの合格
- PEBC MCQの合格
- PEBC OSCEの合格
- IELTS、TOEFLなど各種任意の英語試験にて必要な得点を得る
- CP3(Canadian Pharmacy Practice Program)およびSPT(Structured Practical Training)完了
- 各州のJurisprudence examの合格
この他にもInjection trainingなど細々と追加の資格は必要ですが、以上が私が乗り越えてきた数々の試練になります。
これらのプロセスについて、もう少し詳しく説明していきたいと思います。
NAPRAへの登録
難易度:★
正式名称はNationals Association of Pharmacy Regulatory Authorities と言う団体です。
外国で薬剤師免許を保持している方がカナダで薬剤師になるにはどうしたら良いか、そのプロセスを主に管理している団体です。
現在はこの団体への登録が必須となり、ここからIDをもらえなければPEBCへの登録へと進めないようになっています。(ケベック州を覗く)
この団体に登録するだけですでに380カナダドルがかかります。
登録自体は数日以内には完了しますし、必要書類などで苦労することもありません。
Document Evaluation
難易度:★★★
NAPRA登録を済ませたあとは、いきなり難易度が上がる書類審査が待っています。
とにかく細かい要求が多いので、また他のブログ記事にして詳しく説明をしていきたいと思います。
ざっくり言うと期限以内に、必要書類を、すべて英語で、公証付きでPEBCに提出するミッションです。
英語の翻訳にも翻訳証明が必要ですが、個人名で翻訳証明をしてくれる方がなかなか見つからない、公証人探しにも一苦労という、カナダと日本の文化の違いのせいで地味に苦労の多い過程となります。
Evaluation Exam
難易度:★★★★
無事に書類審査を通過したあとは、いよいよ最初の試験が始まります。
この試験はいわば薬学部を卒業したことを証明するための、基礎薬学中心の試験になります。
難易度としては日本の国家試験ほど意地悪なものではありませんが、CBTよりは難しく、何よりカナダでよく使われる薬や疾患などが日本とは異なるため、意外な問題やそもそも何を聞かれているかよくわからない問題にきっと出会うことと思います。
こちらは現在、コンピューターで日本にいながら受験が可能です!
PEBC MCQおよびOSCE
難易度:★★★★★
試験はまだまだ続きます。
MCQ(Multiple-choice question)はいわばカナダ版の薬剤師国家試験です。Evaluation exam(通称EE)よりも臨床的な質問がグッと増えます。
OSCE(Objective Structured Clinical Examination)は日本にも導入されておりますが、カナダのOSCEは一味もふた味も異なり曲者です。
正直この試験に私は一番時間とお金を取られました。
こちらも別の記事で詳しく紹介していきたいと思います。
現在、MCQはコンピューターで日本で受験が可能となっています。
そしてなんと2024年現在、ついにOSCEのコンピューター受験に向けてPEBCが動き出しました!まだ開始にはなっていませんが、これが導入されれば全ての試験を日本にいながら受験が可能で、インターンシップでのみカナダに渡航すればよいことになります!
渡航費を最小限に抑えて、日本で仕事をしながらプロセスの大半を進められる日も、そう遠くはないかもしれません。
英語試験
難易度:★★★
私が受験したのはIELTSですが、TOEFLでの受験も可能です。
求められる英語力は中級〜中上級といったところで、州によって異なります。
もちろんカナダで受験する必要はなくて、日本の試験会場で受験したものでも受理されます。
英語の試験対策は、たくさんの人が動画やサイトを出しているため、薬剤師試験の対策に比べて情報量も多く、受験機会も多く、何より昔よりも求められる点数がゆるくなっているので、この過程はなんとかすんなりクリアできるのではと思います。
CP3とSPT
難易度:★★★★
MCQ、OSCEの後に紹介となりましたが、本来はこの過程を先に行う受験者が多いです。
この過程は、いわばその州で代表的な大学が提供する、外国人薬剤師向け臨床薬学の基礎講座(通称CP3)とインターンシップ(通称SPT)です。
ブリティッシュコロンビア州では、UBC(University of British Columbia)が行っています。
以前は大学へ通うのは任意だったり、州によっては不要だったりもしましたが、現在はほぼどの州でも大学への登録が必須になっているようです。
3ヶ月の授業はパンデミックを機にオンライン受講可能となりました。(2024年現在)日本にいながら授業が受けられるのは助かりますが、ここでクラスメイトと仲良くなれるかどうかが、後々OSCEやMCQを共に戦うスタディパートナーに出会えるかどうかにかかってくる大事な機会です。
インターンシップは現場で同じく3ヶ月間、祝日とわず週5日、1日8時間のフルタイムボランティアとなります。こちらも州によってはアルバイト代を出してくれるところもあるそうですが、BC州は全て無給です。
ちなみにこれは薬剤師のプロセスの中で、おそらく一番まとまったお金が必要になる過程です。
Jurisprudence exam
難易度:★★★
全てのPEBC試験を乗り越えてなお、各州に登録してもらうための法律の試験があります。
どんな処方箋は受け取ることができないのか、薬剤師が処方箋がなくてもできること、できないことなど実務に直結する問題が出題されます。
MCQやOSCEに比べると、そもそも出題範囲が狭いので勉強がしやすいのもあり、約1ヶ月ほどの準備期間で臨むことができるように思います。
まとめ
ここまで、カナダで薬剤師になるためのプロセスを、本当に概要だけ紹介してみました。
私は日本にいながら、NAPRA登録とDocument evaluation, EE, IELTS, CP3の座学までを済ませてカナダに渡航したのちSPT, MCQ, OSCE, JEを受験しました。
MCQは現在日本でも受験が可能です。JEもリモート受験が可能ですが、インターンシップを済ませて、カナダの薬局事情を理解したのちに受験するのが理想かなと思います。
そしてこれらとともに、就労ビザはどうしたらいいか、どこで雇ってもらうか、インターンで収入のない間の暮らしはどうしようか・・・などなど本当に大変なことばかりでした。
それでも、これからカナダで生きて行くには、資格取得は大変大きな強みになると思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
引き続き各プロセスについてのお話をしたいと思います。
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